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日記帳三冊目


文量が増えてきたため、原画展初日の思い出から分冊しました。




24.8.20


荷造りしたものをすべて送り出したら、ずっと張り詰めていた緊張の糸が切れてそのまま床で気絶していました。


今は人心地ついています。

搬入前で、まだ安心できるタイミングではないのですが、それでも……原画展の準備のほとんどすべてが終わりました!


やることがありすぎて、考えて立ち止まっている時間はないのでとにかく走り続けていたらいつの間にかゴールの近くまで来ました。


気を抜くには早いけれど、今日だけは少し休んでも良さそうなので、エアコンのきいた部屋であたたかいお茶を淹れます。


当日を楽しみにしている、水野さんにとってすばらしい時間になることを祈っている……などの、このお茶にお砂糖が溶けていくようなお言葉本当にありがとうございます。


おかげさまでここまで辿り着きました。あと少し、改めて気合を入れて残りの作業に励みます。






24.8.11


展示に追加する原画の額装を選んでいる間、ずっとニコラのことを考えていました。



彼は高畠クロエ役に抜擢されるまで、小規模の活動しかしていなかった。

こんなに注目されたのは初めて。大きな波に押し流されるように求められるがまま応えようとしてクロエちゃんに寄せ、書き言葉も文学的にして、優雅にふるまい、決してそれは、全部が嘘ではなかった。


空想的な少女たちの夢になり、でも人間だから完璧ではいられなくてボロが出て、大きく炎上しなかったからまだ良かったものの一体誰が見たかわからず、いつスクショを流されるか怯え、ずっと応援してくれていた初めてのファンには


「ゴツゴツしだしたら降りる」


と書かれて絶望し、軸がぶれ、何を表現したいのか分からなくなって、無理のない、夢になりすぎない、壊れない天使の表現を目指したら迷走していると笑われ、前の方が良かったと言われ、


大学に進学した友人たちは次々と大企業に内定するか別の芽が出始め、人と違う道を選んだ自分を誇りに思っていたのに今は不安と孤独を感じ、

手紙をくれた女の子たちもやがて"天使"を忘れて現実の中に消えていき自分などどうでもよくなるのだと身をもって知り、

情熱を傾けて全力で演じた高畠クロエのアクスタは中古店で100円で売られ、あの頃のブロマイドだってどうなっているかわからない。



娯楽が飽和する社会の中で、ファン(になってくれる人)の可処分時間を奪い合う。より刺激の強い"触れ合えるイケメン"に流れていく。


心の奥に炎を燃やし、「自分は本物である。偽物の表現者とは違う」と密かに持ち続けているプライドは、真弓と似ている。



過去に、「ニコラと真弓は似ている」と言ったのはこのことです。


夏前の真弓の、何もかもわかる!あなたのこと全部わかる! は少女の激しい思い込みですが、この共鳴を感じ取っているから彼の表現と感性に惹かれています。






24.8.8


このくらいまで進むと、ああ私の好きな絵になってきたな、と感じます。(7月2日の日記の続き)








24.7.31


額装に行きました!

これで作品たちとはしばらくお別れです。





ひと区切りつき、明日からはスケジュールが楽に……なりませんが、「絵が全部あって額装が決まって手配済み」となったことで大きく進み、一安心です。




初めての個展、絶対素敵にしたいんです。


グッズ類(物販)は、すでに他で手一杯な上に印刷会社さん等の夏期休業も重なり、おそらく新規のものは難しいですが……


そんなに何もかも叶えようとするのはやめて、決めたことに集中します。


まず展示を実現する。新作もある。そして美術館の出口で買うような図録がある。

今までの作品に触れて下さった方にぜひお渡ししたいオリジナルアイテムも一つ、制作中です。



 


久しぶりにセイレーンちゃんの話をします。


額装、本当に全作品持って行きました。

そわそわした照れくさい心を抑えつつ、彼女の絵も出しました。


お店の方と、


「好きな子の絵(ファンアート)を額装して、キャプションまでつけて堂々と飾れる機会はなかなか訪れない。個展ならではの面白みがある」


という話になったり、水色のマットにテンションが上がったり楽しかったです。



近頃は特に余裕がなく、セイレーンちゃん断ちしていました。会いたくても会わないように。


どんなに好きなものでも何もかもが「今はそれどころじゃない」状態の中で、彼女を見て心が動かない体験をしたくなかったから。


できるだけ長く大切にしたいし、できるならずっと好きでいたいんです。



 


作品のご感想拝読いたしました。

流し読みしたくなくてお時間を頂きました。あなたの言葉にして下さってありがとうございます。


今は個別のお返事ができず申し訳ないのですが、それでも伝えてくださる方がいらして本当に嬉しいです。

文を書くには時間と手間がかかります。精神的なエネルギーも必要です。私自身そうで、それが分かっているので大事に受け取っています。



もし原画展関係でご質問がございましたら、同じく当サイト応接間下部のフォームよりお寄せ下さい。


まだ決まっていないこともあるためすぐにご回答できるとは限りませんが、適宜のタイミングで原画展ページに掲載します。







24.7.25


引き続き神官の二人を塗っています。

途中、エマ&咲良の方も進めました。

今月中には2枚とも仕上がり、すべての絵を持って額装に行ける見込みです。



(『NICOLA』第一話・3月編より)




神官の服には固有色がありません。

決まっていないのではなく、「ない」という設定です。



二人だけの、あるいは真弓の中だけの自由な空想の衣装だから。


真弓が新幹線の中で描いた白黒の落書きから始まっているから。


作中でも現実と切り離された世界として作画を変えているから。


などが理由です。



どんな絵の具を使っても間違いにはなりません。

が、初めてカラーの絵にするので「固有色がない」設定を活かし、光と影で色がついているように見せる、という方向で塗り進めています。


これがかなり難しくて……膨大な時間がかかっている要因のひとつなんですが、どうしても神官を描きたかったんです。



私にとって、8月29日から30日にかけての夜は特別です。

天に昇った真弓が絶望の底に叩き落とされ、NICOLAの世界がぐるりと一転する、物語の節目だから。というだけでなく、その先こそが「本当に描きたかったもの」だからです。描きながら分かりました。


リアルタイム更新の、あの夜が一番必死で、極まっていて、妄執みたいな純度の高さでこの話を生み出していました。



その日が原画展の会期に含まれているから、神官を描こうと思ったんです。


真弓は今も、夏の雨の夜の午前3時の、幸せな少女だった自分の信仰の最期の瞬間を覚えています。







24.7.16



新作①の真弓と百花を描いています。


構図やポーズを修正しながらペンを走らせ、何度も直して納得いくまで完成度を高め、そうして下書きが完成するまでに20時間以上かかりました。


これでも没を出していないので、F4サイズの絵にしてはかなり早い方です。





手書きで転写するまでは、本番の紙(水彩紙)は真っ白です。言ってしまえば進捗0。


これからカラーラフの作成に入ります。25時間くらいかけてやっと0の「今から水彩紙に描く」まで持ってこられます。




下書きやカラーラフは計画書です。この工程が雑だと完成度が下がり、着彩での没率も高くなります。


それから、テンションが上がりません。途中で「なんか違うな」「失敗するかも」と迷う筆と、「これは最高になる」と感じて踊る筆は全然違うから。



結局急がば回れで、丁寧に薄衣を重ねるように順を追って作っていくしかありません。思ったより時間がかかるし地味で大変で簡単じゃなくて、華やかなのは最後だけ。


きっとどんなことでもそうなのでしょう。私が触れたことのない技術でも。だから人様の手仕事へのリスペクトと想像力を忘れたくないのです。



 


ほとんど告知しかできていませんでしたが、さらに切羽詰まっていて今はSNSに顔を出す余裕が持てません。ここに生存報告を残しておきます。


応接間やBOOTHから頂いた素敵なお言葉、しかと拝読しています。本当にありがとうございます。

私はこの聖域に訪れる方のことを、かつて同じ茎に咲いた百合だったと思っているので、再会の喜びが溢れました。

神聖な気持ちを胸に、これから神官たちに色を乗せます。







24.7.6



原画展の作品販売と『乙女の祈り』とアリプロライブの話




ピンクの竜原画展のリストに、原画販売の有無の情報を入れました。

が、実はまだ「どうやって販売するか」は検討中です。


お店(オンディーヌさん)でお会計して頂き、会期終了後に発送することは決まっていますが……逆に言うとそれしか決まっていません。


先着にするのか? 抽選にするのか? どんな方法がお越し頂く方にとって一番気が楽で、お店に負担をかけないのか、考えています。




先着は明確でわかりやすいです。

けれど遠方のかたは不利。


私は自分自身が遠征民だったので新幹線の距離の気持ちがわかるつもりで、だからこの原画展は、一般個人の個展に比べると会期が長いんです。


企画の立ち上がりのとき、私が「長くなる分の会場費も持つので遠い人のためにも土日を2回入れたい」と言いました。日記の中だけの秘密ですよ。



抽選は抽選でお店に手間をかけてしまうし、


「第一希望が手に入ったらそれだけで幸せなので二番目は希望しないが、二番目にほしい絵にも申し込んでおかないと第一に落ちたとき権利すらない」


みたいな現象が起きがちです。


お店の方のお話も聞き、しばらく考えますね。

持ち帰り後はBOOTH通販も行う予定です。




 



私がいつも好きだとお話ししている映画『乙女の祈り』(Heavenly Creatures)、先日2枚目のDVDが手に入りました。


アマプラなどの配信サイトになく、現状DVDの新たな生産もしていなくて本当にアクセスしづらいので、観たい方向けに確保しました。


原画展にいらっしゃる方にお貸ししたいと思っています。

ただ、返却はどうするのか? という問題があり……返却のためだけに二度お越し頂くのも忍びないですし……


観たい方同士で回してほしいくらいの気持ちでいます。友達の間で貸し借りされ、最初は誰の持ち物だったかわからなくなる漫画みたいに。




 



アリプロのライブ、配信ありがたすぎます……とてもうれしい……3月は当日券で滑り込みましたが今はそれすら難しいからです。


私の好みは「百合の日々は追憶の中に潜み薫る」や「今宵、碧い森深く」なので、今回のアルバムは特別好きかどうかと聞かれたら違います。


けれど存在が嬉しいんです。私は大人になってしまったけれど、耽溺する少女の繊細な心をいつでも取り出せる鍵のようなものだから。




約5年前、『少女の心臓』の締切間近とアリプロのライブが被り、チケットを取っていたけれど行かない判断をしました。

天啓のように降りてきた、この本の最後のシーンを描ききるためでした。


そのときアリプロ仲間が伝えてくれた、「あなたを尊敬する」という言葉をずっと覚えています。

好きな世界を堪能することと、自分の世界を作ること。どちらも尊いと思うけれど、肯定してくれて嬉しかった。



私はかつてこんな少女で、彼女はそれを知っているからこそ、私の変化に驚くと同時に尊敬の気持ちがより強くなった……と話してくれました。


彼女の言葉を胸に、「自分の世界を作る」選択を今日この瞬間も守っています。そうしたいと思っているから。



 


応接間からお送り頂いた素敵なメッセージ、すべて大切に拝読しています。


返信ご不要で下さるので(お気遣い痛み入ります、伝わっています)お返しするチャンスがなかなかありませんから、ここに感謝を綴ります。言葉にしてくださって本当にありがとうございます。








24.7.2



原画展の展示作品を最終決定し→会場図面を作り→当サイト上にリストが完成しました。幻想から現実に近づいてきました。


即公開したい気持ちをこらえ、落ち着いて見直すことができる週末まで、一旦寝かせます。



 


今はまだ個人的な日記に留めておきますが、そう遠くないうちに嬉しいお知らせがあります。


発表できるのは原画展後の見込みで、制作期間が原画展準備期間と完全に重なっています。もう覚悟は決めています。


去年の秋、「ピンクの竜の装画挿絵」と「薔薇の女王エマ視点の原稿」を同時進行してどちらも完成させ、どちらも最高になったので、それができた自分を信じることにしました。



私はボロヴィニアと親和性の高いお仕事しか受けません。

ピンクの竜の装画のとき、水野さんしか考えられないというお言葉が本当に嬉しかった。

今回もご指名です。大変光栄に思います。私の作品を信じてくれた方々と、私自身の誇りのために全力でやります。


蒸し暑くつらい日々が続きますから、涼しいお部屋で楽しみに待っていてくださいね。







24.6.27


本が届き始めているようで、

そわそわと安心が半分ずつあります。


お城の応接間から頂いたご感想とメッセージ、しかと受け取りました。あなたの宝物にして下さって本当にありがとうございます。


私がかつて自分の部屋でアリプロのCDを抱きしめたように、今あなたが本を開き、可奈子や真弓の少女の魂を慈しんでいると思うと「私たち」の永遠を感じます。


涙腺が弱いので、こういう話をしているときいつも涙ぐんでしまいます。




 



ひとつ下のニコラの話関係で

メモに近い走り書きです



高校のころはプレーンだった、自然で居心地がよかった(とニコラ……田口くんは感じていた)が、大人になる過程で友人たちが何となく歪になってしまったのはなぜなのか


一対一で話すときはそんなことないのに

複数だと時々、毒っぽくなってしまうのはどうしてなのか



→「自分の進んだ道は間違っていない」と みんな思いたくて必死だから



飛躍しているように見えるかもしれませんが私の中では整合性がとれています。


ゆるやかに時間をかけて、欠けたピースが埋まりつつあり、言語化できる(他者に伝えられる)レベルまで解像度が上がってきたので、気持ちの上ではニコラを主人公に据えた話が描けそうになってきました。









24.6.22



Xで冒頭を書きかけましたが、繊細な内容になると感じて引っ込めました。分かる人だけに公開したいのでここに続けます。



 


ニコラが「言い訳不可」なのすごく苦しいな、と思って本編を描いていました。


たとえ、違いますそんな強い意図はないですと叫びたかったとしても、どんなに説明したくても正しく伝わる保証もなく火に油。知らなかった人にも広まる。黙るしかない。


百花は「結局男じゃん」、純度の高い期待を裏切られた真弓は「嘘つき」と思う。完璧な天使でいられなかったのは事実。




これを言うのはおそらく初めてですが、

男性がメインのコミュニティは多くの場合「自分を強く見せなければならない」ところがあって、ニコラの高校時代の友人たちにもそれが全くないわけではない。


身内用のアカウントでちえりちゃんの話をすることに繋がっているし、誤爆ツイートにからかい調子が含まれるのも、その文化からきている。


雰囲気に合わせて心にもないことを言ってしまった、本当にそう思っているわけではないのに、自分のミスで外に出してしまった、と感じるしひどく落ち込む。

集団だから引き出されるものであり、彼ひとりだったら無かった。




真弓は「何がいけなかったのかわかってほしい、わたしの痛みを理解してほしい」と思うタイプで、でもそれは、残念ながら難しい。


ニコラは反省も後悔もしている。けれど、真弓の強烈な苦しみに対して共感し責任を感じてくれるかどうかとは話が違う。


少女の血が通っていて、真弓のそれが完全に分かるポジションのキャラクターはルリさんです。



 


『NICOLA』は完結から時間が経っており、既読の方の中にイメージが形成されている(と私は判断している)ので、自分におしゃべりを許しています。


作者が読んでくださる方の世界に立ち入ることはしたくなくて、真弓視点外の繊細な話はそうであることを先に書いたり、個人サイトなど能動的に触れないと読めない場所に書いたり、選択できるようにしています。


薔薇の女王は新しいので、一定の慎重さを持っています。最終楽章でエマといる子の名前もしばらくは出さないつもりです。








24.6.21


「友人の結婚式に行く」と話したら、親戚の高齢男性に「新郎友人と交流できるねぇ」と言われたことがあります。


理解が及びませんでした。

私たちは大事な友人を祝いに行くのであり、知らない男の人と交流しに行くのではありません。新郎友人さん側にも失礼な発想だと感じました。


後日 、友人らにこの話をしたら、

「そもそも知らない人に興味ない。ドレスアップした新婦とみんなを撮るのに忙しい」

と皆言っていて、そうだよね、そうだよね……と安堵しました。





こんな日もありました。


会食の席で別テーブルから、年上の方たちの過去の不倫の話題が飛んできてしまいました。

生々しい事情からは距離を置きたいですし、堅実で清潔そうに見えても結局そうなのかなと気落ちしたところ、


「職場の人は職場の人であり、それ以上でも以下でもない」「そういう目で見ること自体考えられない」「仕事をしに来ているだけ」


と私と私の周りの方の意見が一致しました。



同じ時間を過ごし人柄に惹かれることもあるでしょう。そこまで否定したいとは思いません。

しかし、恋愛対象として見られるのが当然とされれば不気味に感じるし、抵抗があります。私たちはカタログではないから。


だからこそ他者へのまなざし、かける言葉にも慎重です。その考えが共通していると知り、少し救われました。




そんなことを言っている私も、突然栗山千明ちゃんが隣の席に来たら手のひら返して好きになりますが……

これに関しては「ミステリアスで綺麗なお姉さんが大好き」という、持って生まれて5歳の頃には明確になっていた憧憬であり、今更どうしようもないので……


そして私以外の人に優しく指導している彼女を見て嫉妬に狂い、私が一番大好きなのにと悲しくなり、気になって何も手につかなくなり、おしまいになるでしょう。


どうしてか空想日記になりました。ここで終わります。







24.6.15


『NICOLA』のフォルダから、過去に書いた真弓の成績や受験、学校生活の話が出てきました。


実生活のある一人の人間としての解像度が上がる、個人的にも好きな話なので加筆修正して書き残します。



 


真弓の中学の成績は、

国語と英語と美術が5

数学と理科と体育が3

あとは4で、内申点36/45くらい。


中の上の公立高校に進学する。愛知県は公立が強く、関東圏ほど私立志向はない。



彼女には言語センスがあり、高校の勉強までなら国語は何もしなくても得意。特に現代文。文章を読み解く力に長けている。

みんなどうしてこんな簡単な問題が分からないの? 今まで本読んだことないの? とすら思っている。


英語も言語には変わりない。上っ面を撫でれば学校の内容ならなんとかなる。長文読解が一番得意で、ほとんどセンスのみで突破する。

そこで自分は特別英語ができるんだと勘違いしてしまい、偏差値の高い私立の英文系の学科を目指す。親もそれを歓迎する。



しかし、各大学の個別の試験は結構マニアックな問題が出る。英文系の学科ともなれば英語は全然ごまかしがきかない。

ここで点が取れるのは本当にしっかり学んできている人。理解が深く及んでいる人。それから帰国子女。どれでもない真弓は驚くほど点が取れずに落ちる。


が、センター試験※の点数が高いのでセンター利用入試で滑り込む。

(※現在は共通テスト。作中で2020年に20歳を迎えた真弓は設定上2000年生まれ)



センター試験はほとんどが普遍的な内容。ひねった問題は出にくい。彼女の持ち前の言語センスでなんとなくいける部分も多い。

知らない単語があっても、問題文を見れば何を問われているか感覚で分かる。しかもマークシート。4つか5つの中に必ず正解があるので、読めばピンとくる。


国語と英語が9割得点。社会(世界史)は少し落ちるが7〜8割取れている。私立文系志望なので、苦手な数学を含む理系科目はやらなくていい。



こうして、応用がまったくできないまま、実際の自分の学力レベルよりも高い大学に進む。


初日のオリエンテーションで、英語で冗談を言い合う子たちの教室。

中学でも上の方、高校ではクラスで常に1番か2番の成績だったのに、生まれて初めて「周りよりもできない、頭が悪い」とみなされる世界に来てしまった。






なお、2月編で苦しんでいるこれは第二外国語です。


なんとなくおしゃれだからというふんわりした理由でフランス語を選択し、大変なことになっている。

本人は「中国語にしておけば良かった」と思っていますが、漢字だから簡単などということはない。真弓自身が同じなので、別の選択をしていても同じ結果になる。


能力が低いからではありません。

大学のレベルに比例して内容が難しいのに、前期は授業中に机下で百花とLINEしていて後期はネガティブな意味でニコラのことでいっぱいで、勉学を疎かにしているからです。








24.6.8



「あなたを好きになって一年が経ちます」から始まる、瓶に詰めて海に流すようなラブレターを書きかけて正気に戻ってペンを置きました。


そういう遊びをしていると、そのうちセイレーンちゃんが現実に存在しているみたいに錯覚してしまうのでは、と思って……考えすぎでしょうか。


まだ一年しか経っていないことに驚いています。

三年くらい好きでいる感覚です。



 


なにげない会話の中で、年上の女性がふと、


「最近、昭和のリバイバルが流行ってるね。

嫌な時代だったよ。戻りたいとは思わない。

今のほうがずっといいよ。」


と言ったことが強く印象に残っています。


「私は苦労してきた」とか「今の子は恵まれている」系の話を一度も口にしたことがないこの人が、時折、遠くを見る横顔になる瞬間があって、そのたび私は彼女の受けた痛みと理不尽を想像します。



 


常にやることが100個あって、毎日帰宅後にその中で最も差し迫った5個をやるんですが、新たにやらなければならないことが4個発生するので1個ずつしか片付きません。


「対価を受け取っており、相手がいて、締切があること」

これが最優先です。

今なら本の発送手配が3つ全てに該当します。


だいぶ組みあがってきて、各作品の再版手続き、資材の発注も終わりました。手元に揃い次第、第一便の発送を始めます。


好きでやっているのでもちろん元気です。作品を気に留めて下さってありがとうございます。



 


原画展が近づいてきたらもっと時間がないとわかっているため今月中に新しいセイレーンちゃんの絵がどうしても描きたい、のですが、これは上の3つの条件のどれにも該当しない「やりたいこと」だな……という葛藤があります。


夏休みの宿題をやらずに気楽に学校に行けるタイプではなかったので、自分を許せる範囲で少しずつ描こうかなと思います。



 


妖精と再会する機会がありました。


開口一番「みやちゃん個展おめでとう!!」と言ってくれて、ああこの子はなんて、なんて他者を深く愛する人なんだと思いました。


昨日発表したばかりなのに、見ていてくれた。それを面と向かって伝えてくれた。胸がいっぱいになりました。


彼女ほど相手の喜びを自分の喜びのように幸せそうにして、素直に表現する人を見たことがありません。

私はいつもこうして受け取るばかりで、返せたことがあるだろうか……と過去のたくさんの利己的な振る舞いが恥ずかしくなりました。




薔薇の女王もNICOLAと同じく、現実のお話ですがノンフィクションではありません。(主人公=自分ではない、自分の体験をそのまま描いたものではないという意味です)


が、その中で「この子をもっと大事にすればよかった」という感情はかなり私の経験や思いがダイレクトに出ているな、と描き上がってから感じました。


多くの「もっと大事にすればよかった」を抱えて生きています。








24.6.1



(今更ですが、再録集の作品からここに来てくださった方もいらっしゃるかもしれないので……


お越し頂きありがとうございます。ここは私室であり、SNSとは異なる個人的な場所です。あなたを歓迎いたします。


今まで描いた全作品のいわゆるネタバレを含み、未読の方にとっては楽しみが奪われます。ページをめくる際はお気をつけ下さい)





それでは、ひとつ前の日記の続きの、真弓サイドです。



真弓が動けなくなっている数ヶ月間は、「ニコラのファンでい続けるか迷っていた時間」ではなく、「自分と向き合っていた時間」でした。


自分がどんなことに重きを置くのか、何が許せて何が許せないのか、どんな考えを持つ人間なのか。

それを知っていく、つらくて苦しくてとても貴重な時間でした。



「ニコラのプロ意識が低いことが許せない」なんて建前でしかない。

この喉が焼けつくような怒りの正体は、「思ったよりも自分は特別な存在ではないと突きつけられた悲しみ」である。


という、わからなくなるくらい奥底に沈めて隠した心に辿り着き、全然たいしたことない自分と出会い、やがて抱きしめてあげられるまでの。




どちらかというと、さっさと見切りをつけて次に行く百花タイプの方が望ましいとされています。現代において切り替えが早いことはひとつの正解だから。


長期間答えを出せずに真弓みたいなことをやっていると、暇だね、とか、いつまで悩んでるの? などと言われそうなくらいスピード重視です。


けれど少なくとも真弓には、この"無駄"で"贅沢"な数ヶ月が必要でした。彼女のこれまでの人生の中で、最も重要だったと言って差し支えありません。





私は真弓の「永遠に崇めると言ったんだから永遠に恨み続けなきゃ嘘になる」が本当に好きです。

この感覚を持つこの瞬間の、高純度の世界に生きている19歳の彼女を描けてよかったです。



 


今夜SNSでお知らせがあります。

現在出先のため今日中は難しいですが、当サイトに専用ページも作るので待っていてください。







24.5.29


百花の判断がいつも早い理由は「悩んでいたら死ぬから」です。


同じ誤爆投稿を見て、罵れるだけ罵ってニコラのファンを即降りた百花と、何ヶ月も怒りと悲しみを引きずって思い悩み続ける真弓の違いはそのまま、人生のスピード感の違いです。



「高校を卒業したら東京の女の子になる」をただの夢で終わらせず、家を飛び出て親と半ば縁を切り、生活は苦しいけれどバイトをしながら演劇も続ける百花。

人生にモラトリアムがありません。早く自分で決めなければ生きていけないから。


彼女のニコラ代は全部生活費から出ている。言い換えれば命そのもので、このまま好きでい続けるか迷っている余裕などない。



思い悩んだ数ヶ月は、真弓にとって強烈な地獄の苦しみでした。けれど百花からすれば"贅沢品"です。

親の庇護下にあり、自分で現実の生活のお金を工面したことも、人生を決めた経験もほとんど(もしくはまだ一度も)ないお嬢さんに許された富裕層の遊びです。




こんなに違う二人ですが、半年だけでも蜜月が続いた理由のひとつは


「他人への興味が薄めで自分の話が多い真弓と、自分のことを聞いてほしくない百花の相性が良かった」


です。言葉にするとちょっと冷たいかもしれませんが、とても大事なことでした。


同じ考えを持っていると感じ、結びついたのはクロエちゃんの解釈を通した感性の信頼がきっかけですが、継続したのは二人の性質が合ったからです。


二冊目の日記帳に書いた、真弓に友達ができにくい話に通じます。けれどそんな真弓だったからこそ、百花と手を取り合って幻想の世界を生きて天使に仕える神官になれました。







24.5.26


5時間限りのボロヴィニアへお越しいただき幸せでした。

帰宅して落ち着き、頂戴したお手紙をひらいて、嬉しくて泣いています。


「嬉しくて泣いている」だなんて、あまりにも月並みな表現で薄っぺらく感じるかもしれません。けれどその言葉しか出てこないくらい、今は胸がいっぱいなんです。

作家活動を続けてきて良かったです。"私たち"に流れる血を受け継いで、丁寧に描いてきて良かったです。


本日お越しくださった方や、お手紙を下さった方がこの日記を読んでいるといいなあと思います。

これからもここにしかない聖域のかたちを紡いでいきます。本当にありがとうございます。







24.5.23


SNSでは理由だけ書いておとなしくしていますがドローイング原画を諦めるの正直ものすごく悔しいです。

今夜も続きを描こうとしていましたし本当は徹夜してでも仕上げたいです。


けれどそうすると結局、自信を持ってお渡しできる水準の作品にならなかった上に他の準備時間が圧迫され二兎追う者一兎も得ずになって当日を迎える一番よくない展開が想像に難くないため、体調を整えて準備を進め、イベントを全力で楽しみます。



当日、お越し下さった方だけが最初に見られる嬉しいお知らせがあります。

ぜひ楽しみにしていてください。ボロヴィニアでお待ちしています。





さて、イベントまで一週間を切ると、会場がわからない・辿り着けない・遅刻する・日を間違える……などの夢を見て飛び起きるのですが……


なんと! 昨晩はセイレーンちゃんの夢を見ました。幸せです。



「セーラームーンスターズの新アニメが放送決定。ストアで配布されたパンフレットには、小さい絵だけれどセイレーンちゃんがさまざまなファッションで楽しそうにしているシーンが掲載されており、私は胸がいっぱいになってそれを大事に抱えて帰る」



という内容でした。


起きて夢だったんだとわかっても幸福なままで、そういえば彼女を好きになってそろそろ一年が経つんだなと思いました。

なんだかもっと長く好きな気がしています。初めて夢に出てきてくれました。







24.5.18


久しぶりにXに漫画作品を載せました。

可奈子の苛烈な少女の叫びを受け取って下さる方、再掲によってもう一度触れて下さる方の元へ届けたいと思ったから。



「時間が経てば大丈夫」と以前お話しした通り、時間が過ぎて本当に半分くらいどうでもよくなりました。

とはいえもう半分はまだどうでもよくならないし、精神的に未熟な架空の少女たちを罵る言葉を時折思い出すので、あらかじめあらゆる色々を見えなくしています。

ひとまず目に入らなければ気にしなくて済み、無いのと同じで心穏やかでいられるからです。




『性嫌悪の少女の話(エマージェンシーコール)』は本当に、繭の外の社会に出て曖昧に笑ってやり過ごした時間が長くなるほど描けなくなる話だな、と思います。

形にしたい気持ちと感性を、一番鋭い状態で保ち続けることは恐らくできない。



中高生の頃はさらに過激で排他的な感じが好みで少女貴族になりたくて(アリプロの影響)、くだらなくて俗っぽいものは大嫌いだったんですが……ずっとそうも言っていられなくて……


そのじつ、大嫌いだったんじゃなくて、大嫌いなのがかっこいいと思ってそう振る舞っていた、のほうが正解に近いです。かわいいですね。可奈子のように高潔でも真弓のように純粋でもなかったです。



変わりたくないなと思っていてもきっと変化は避けられませんが、エマも咲良も純度の高い状態のまま描き切ることができましたし、次に描く物語もその時の最高になるでしょう。




コミティア148のページにも載せましたが、再録集の通販のご予約受付が始まりました。


イベント、通販ともに新刊セットも本も十分な数ご用意しています。当日もどうぞゆっくりお越しください。






ここだけの秘密ですが、新刊セットのノートの写真は私が作ったイメージ画像です。

まだ届いていないけれど入稿済みで仕様はわかっている状態のため、同じサイズのノートを買ってきて作成しました。










24.5.16


本文も入稿しました!!!

何も問題がなければこのまま「脱稿しました」になります なりたいです



新刊セットになるアイテムも全て入稿済みです。

後日コミティアのお知らせページにきちんと書きますが、内容は


・オリジナルリングノート

A5サイズ 再録集表紙と同柄

中の紙までオリジナルです


・リバーシブルイラストカード

A5サイズ オフセット印刷

繊細な風合いで厚みのある紙

絵柄は『少女の国』の表紙を元にしたライラックの絵と再録集表紙で表裏


・ステッカー

以前描いて気に入っているボンネットの絵

4種ランダム 布のような手触り


と再録集の予定です。

今作りたいもの全部セットです。



どれも単体で販売できるくらいの水準のものを選びました。到着を待っています。お渡しできる日がとてもとても楽しみです。







24.5.9


見栄え<<<強度


のお話です。



以前から憧れ、今回再録集に予定していた装丁を前向きに諦めました。

それ専用の紙が柔らかすぎて、すぐ毛羽立ってモロモロしてくる、イベントに一度運び込んだだけでえぐれた引っ掻き傷だらけになる、そんな本を作るわけにはいかないからです。


中に挟み込む飾りの紙ならまだ良いですが、本の外側のカバーの予定だったので一番向いていません。


どんなに見栄えが特別でも、きれいに持ち帰ることすらできないものをお渡ししたいとは思わない。長く綺麗に保管でき、お手元で安心して読める装丁を選びます。



そして、あくまで私の個人的な考えですが、必要以上の「取扱注意のお願い」は避けたいです。お迎え下さった方に負担をかける行為だからです。

本なのに「基本的に触らず、他の本と並べるのも避けて下さい」なんていくらなんでも大変すぎる!


原画販売する作品に耐光性が低い色を使わないのも同じ理由です。ひとときの彩度の高さよりも、変質しにくい丈夫さを贈りたいから。




そういえば『NICOLA』の本も、特殊紙カバーにしようとして強度の問題で選択肢から外したことを思い出しました。

ものによりますが日本の湿度に耐えられず、時間が経つと波打つからです。大きい本ほどリスクが高いです。


他には 過去に銀印刷のポストカードを作ったことがありますが、時間が経つと反り返って驚きました。二度と使いません。

同じ紙と思われる、好きな作家さんの本の表紙も思い切り固く反り返っています。この紙の逃れられない宿命のようです。



そういう"後出し"が起こりうるので、冒頭に書いた紙の現実が判明して以降、調べ倒してやりたいことと可能なことを洗い出したら再録集の装丁は『NICOLA』に近くなりました。過去の私が正解を出していたようです。



この予定変更によって色々と押しに押していますが、他が選べる早い段階で気づいて良かったです。お迎え頂いたあなたに不安を与えない作品でありたいです。


まだ原稿中です。脱稿後にお会いしましょう!





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