2020年8月から11月までのツイートから抜粋。
備忘録です。誤字脱字等の修正、注釈あり。
主にNICOLA制作中の呟きから設定、裏話、少女の感性のお話など。
2020.08.05
一貫して描きたいものは、空想的で傷つきやすく高慢で陶酔しがちな少女(たち)、その感受性、その世界。それ以外の要素はすべて舞台装置。
おたく活動、"同担"という他にない関係、2.5次元の特殊性などは大切に扱う部分ですが あくまで描きたい感情を引き出すためのもの
気付いたら主客逆転、ということにならないよう繊細に編んでいきたい
2020.08.08
中学高校と、うつくしい長い髪を揺らし少し冷たそうに見える美貌を持ちすらりと長い手足で高潔な魂を抱え特別な音楽や絵の才能がありわたしに優しい女の先輩に恵まれる最高の時間を過ごしたため、永遠にその幻影から逃れられません
2020.08.08
絵で表現するしかないためわかりづらいですが 舞台のグッズなのでアクリルスタンドもブロマイドもすべて実写です。
ニコちゃん扮する、優雅で儚く、触れなば落ちん風情をしておきながら、しなやかな軀と毒の棘を持つクロエちゃん。
2020.08.15
真弓は美大生ではありません。高校時代、興味はあってデッサン教室に足を踏み入れたけれど途中でやめた。 受かる自信が無いし落ちたら傷付く。自分が丸ごと否定されたと感じる。そうなるくらいなら初めから挑戦しない。
たとえ入れても、自分の実力がどの程度か毎日突きつけられる環境は恐ろしい。バケモノみたいなセンスの同級生と肩を並べるのは苦しい。人と比べられるのが怖い。 完璧主義。上手くなってから披露したいと思っているタイプ。たくさん作ってどんどん発表し実力をつけていく人に追い抜かれる。
プライドの高さに実力が見合っていない。繊細すぎて、傷つく前に逃げを打つ。わたしは100%の力が出せればもっとすごいのに!とモヤモヤしている。
なお彼女は「クラスの中では1番上手だけど絵描きの中ではそれほどでもない」。今まで井の中の蛙で生きてきた。
表現したいものはあるが非常に理想が高い。今のレベルでは到底届かず苦しんでいる。
その真弓がニコラと出会ったのは幸福でもあり不幸でもある。ニコちゃんの中に理想を見て心酔し、自分の力で自分の世界を表現することを半ば放棄した。
今の彼女は、他人に夢を叶えてもらおうとしている。
2020.08.30
リアルタイムでこの仕掛け(8月編後半を、前半最終ページの電話がかかってきた時間に更新したこと)をお楽しみくださった方がたくさんいらして、私も目一杯楽しかったです。
それと同時に、時計の針を進めてしまったら彼女たちは、……と思うと、躊躇いました。30分前にはもう生きた心地がしませんでした。現実との境が分からなくなる特別な夜でした。
投稿サイトの方に、「これまでは序章に過ぎなかったのですね」というコメントを頂戴し、ああ、伝わっている!と感動しました。
"天に昇った分だけ、地獄の底へ"。
これまで描いてきた全ては、この、8月29日と30日の間の夜に向けてひた走っていたのです。
やっとお話できます。
『NICOLA』は、二部構成の物語。
今回で第一部が終わりました。
ここまで一緒に走ってくださって本当にありがとうございます。
2020.08.31
ああ、やっとここまで物語を創り出せた。夢を見て、けれど私には出来ないと思っていたことが、今はできる。誇らしいです。
まだまだたくさんお話したいことがありますが、少しインターバルを置きましょう。
NICOLAの読切版としても先行している作品『少女の心臓』から、変更した箇所、しなかった箇所、その理由などもゆっくり綴りたいと思っています。(後日綴りました。こちら)
次回、第二部のスタートとなる9月編は、これまでと少し趣向が異なります。お楽しみに!
2020.09.01
夢も希望もない話ですが、真弓の精神性は生身の人間を追いかけるのに本来全然向いていないです。
彼女は自己の理想を投影する/自分の世界を強固に持っているタイプ。最も心地よいのは、二次元かつ想像の余地が残されたキャラクター。高畠クロエがそれ。
これとイメージの固まった既知のものの、新しい要素が出るのに身構える。怖い。
例えば、子供の頃に触れた作品がリメイクされ声がつく、想像の余地のないリアルなビジュアルに変わる、など。もはや自分の中で聖域になっているので荒らさないで欲しい。
とにかく繊細。しかしなかなかこの気持ちは分かってもらえない。皆が喜んでいる中、言えない。
三次元はリアルタイムで動き続ける最も生々しいコンテンツ。二次元の高畠クロエの延長線上ではない。あの夜、百花から電話が来なかったとしても、真弓には受け入れられないことがいつか必ず起きていた。
最新話以降のご感想、受け取っております。
鋭い観点に痺れたり繊細な表現に唸ったり、少女の存在を感じたり。すべてとても大切に拝読しています。
『NICOLA』は万人受けは難しいです。だからこそ好きでいて下さる方の感性を全面的に信頼しています。この物語を見つけて頂きありがとうございます。
2020.09.01
「推せる」は「信頼できる」とほぼ同義だとわたしは思っています
傷ついた二人。
百花は、もう2度とニコちゃんを信じられる日は来ないと即断して降りた。真弓は、「許さない」と言っただけで離れるとは言っていない。なお執着心が強いのは見ての通り真弓のほう。
さらに百花が指摘したように、真弓は八方美人。いい子でいようとする性質(長女に特にありがち)を持っている。
「"たかがこんなこと"で、永遠に崇めると言っていた推しから簡単に離れる"薄っぺらいファン"」になる自分を許容できるかどうか。
2020.09.02
第一部を脱稿したのでこれまでの軌跡を整理しました✒️
『NICOLA』はアナログ原稿です。(枠線や効果など一部はデジタル)
罫線入りの紙に下書きをして無地ケント紙に清書する形なので1ページにつき2枚。過去二冊の本を合わせて現時点で300枚近い原稿をまとめました。
途中、『少女の心臓』のネームが出てきてほろりとしました。自分でもう一度、少女の国→少女の心臓→NICOLA第一部を通して読みたい。静かな振り返りと、第二部に進んでいく世界の奥行きのために。
2020.10.04
9月編(百花編)全体が、第一部の謎解きです。今一度ぜひ、最初に戻ってみてください。
今回ですべてを明かしてはいませんが、ももかの態度や各セリフの理由など 後から見ると分かるように作っています😌
2020.10.05
はたして本当にそうなのか
あらゆるすべてが思い込みでしかない。
推しが自分をわかってくれると感じることも、ニコラの誤爆投稿から憶測したちえりとの関係性も、こうして互いに抱く印象すら、吹けば飛ぶ根拠のない妄想。真実かどうかなんてわからない。
そういうものに強く囚われて、天に昇ったり共鳴したり時に絶望しながら苛烈に生きる少女の瞳にだけ映る世界が好きなんです。
2020.10.05
真弓の部屋のお話をそのうちしますね🏠
(しました。こちら)
2020.10.10
あの8月が過ぎ 百花編を描き切ったことで、やっとそこに触れられるようになったのが嬉しくて、ずっと溜めていたお話をたくさんしてしまいます
2020.10.11
『少女の国』のほうには、NICOLA本編にたびたび名前が出てくる作家「可奈子さん」の現役少女時代のおはなしも。真弓と10歳離れた、"少女"としての先輩です。
本来は「アリプロファンの高校一年生」という設定の彼女、個人サイトの過去作品の中にも登場しています
2020.10.14
中性的な男の人ばかり好きになる女の子の精神性の話がしたくて、そのためには『バナナブレッドのプディング』(大島弓子)を再読する必要があり、そのためには母の実家の 母が少女だったころの世界を閉じ込めた部屋に行く必要があり、しかし遠いのでもう買おうかなと思っています
2020.10.21
真弓という少女。片想いの後に失恋してこの世の終わりみたいに泣いていた友人が、すぐ彼氏を作ってケロッとしていたら「元気になって良かったなあ」ではなく「嘘だったんだ」と絶望してしまう。
永遠に続くものじゃないなら嘘。同じ口で違う人に「好き」とか言ってて気持ち悪い。その程度だったんだ。全部嘘になった。
彼女はすぐ永遠とか真実とか嘘を持ち出す。潔癖で、人間の多面性や変化が受け入れられない。
2020.10.24
真弓と野菊さん。ファン仲間の中で一番歳が離れていて、人生のステージも異なる。当然、感覚が違う。
ニコラに対しても、真弓は天使信仰。対して野菊さんは疑似息子。「敬虔な信徒」と「近所のおばさま」くらい違う。
真弓は「もともと傷ついているのに責められた+否定された+突き放された」と感じ、野菊さんは「ちょっと付き合いきれないよ。冷静じゃなさそうだから距離を置こう」。
プロット段階では、
「あなたは21歳の男の子に完璧を求めるの?」
という野菊さんのセリフがありました。責めているニュアンスが出すぎるため削除。真弓にとってはニコラは年上、しかも未成年と成人の差もあり、さらに役者という職業。完璧を求められて当たり前(と真弓は思っている)。
(本編中には書いていませんが野菊さんのお子さんは男の子なのでそのあたりも彼女の感覚に影響しています)
2020.10.25
少女・真弓は、ニコラのことを「人間」とも「男性」と思っていない。
人間が見えたら幻滅するし男性が見えたら嫌悪する。「生身の21歳の男の子」には叶えきれない強烈な神格化は、遅かれ早かれいつか壊れる幻想だった。
こうなったのは、真弓ひとりのせいではない。ファンは鏡。ニコラのやり方が真弓の膨大な期待を育ててしまった。
適度にガス抜きしながら「天使」を楽しめるくらいの采配ではなく、私生活を感じさせずSNSの文章まで徹底した演出。自分で自分を人間でいられなくしておいて、ボロを出す未熟さがある。
2020.11.20
Twitterでの真弓。
誰かの「〇〇な人苦手」「解釈違い見ちゃったー」などの発言が自分のことにしか思えず胃が痛くなり、空リプで「わたしかな……😔」と呟く。
作品を送り合うなどした相手から返信が途絶えると、猛烈な不安に襲われ、「駄作で恥ずかしい」「つらい」「送る前に戻りたい」等と呟く。 こんな反応をされた相手は、次から「早く返信してあげなければ」という大きなプレッシャーを抱える。それが交流を億劫にさせ、やがて疎遠に。
相手にも生活がある。真弓につきっきりにはなれない。ただそれだけなのに、一人で勝手に不安を肥大化させてしまう。
嫌われることに敏感すぎて結果的に嫌われてしまう行動をとる。自己評価は高いが自己肯定感は低い。自分を認めてくれる人に依存しがち。
真弓はものすごく人間です。2020年を生きる人間の少女。美しいものや幻想世界を愛しながら自意識から逃れることができない。
2020.11.22
絵を描いているのではなさそう、ということが分かればよいので机の上の本の中身は描き込んでいませんが、設定としては第二外国語(フランス語)の宿題です。(11月編前半のこと)
ニコラにうつつをぬかし、百花と毎日長時間LINEしていた結果、前期の単位を落としすぎて危ない。そのくせ集中できていない。
2020.11.23
「彼氏ができたから創作をやめる」場面に遭遇したことがあります。
鋭く批判的で、毒がちりばめられ、読ませる力のある小説を描く女の子。コアな趣味に打ち込む人たちを見下して小馬鹿にする彼女の精神が苦手なのに、彼女の作品には心惹かれる。というある種矛盾した状態の私。
それが、あるときから彼女は書くことをやめてしまった。
「誰にも言ってないんだけど」
「私は満たされない感情をエネルギーにしてたから」
「彼氏ができて満足して書けなくなった」
彼女もまた、私を好いていなかった。そのはずなのに、部室で二人きりの時だけこういう話をした。
2020.11.24
今回(11月編前半)のサブタイトルは、英語のことわざ「こぼれたミルクは戻らない」(≒覆水盆に返らず)のもじりです。
もしも真弓が百花の半生を知っていたら、違う反応だったかもしれない。お互い自分のことで精一杯で、嘘をついたり取り繕ったり良く見せようとしながら危うい均衡の上に成り立っていた少女たち。
2020.11.30
真弓はずっと怒っていました。
「自分が思ったより特別でも何でもなくて悲しかった」から。
けれど、そうだと認めるのはとても難しい。自分の弱さや欲望と向き合わなければならない。物語なのでルリさんの助けもあり三ヶ月で辿り着きましたが、現実ならば年単位の時間がかかっていたでしょう。
「百花のため」と大義名分を掲げたり、「プロ意識に欠けている」論調で糾弾したり。もちろん嘘ではないけれど、決して本題ではない。これらを掲げていれば、わたしは悪くない、わたしは正しいのだと感じていられる。
『嬉しい!僕の表現を誰よりもわかってくれる人が現れた!』
とニコラに思っていてほしかった。
そうだとなぜか確信していた。
品のない有象無象とは違う、芸術のわかる、ニコラにとって一等大事なファンであり唯一の存在であるところの特別なわたし、くらいまで思い込みだけで昇っていった自己愛的で高慢な少女。
事務所報告メールもそう。
長々と推敲していたのは本当だけれど、ちえりちゃんの話を聞いたときの怒り(≒自分は大事な存在ではなかったらしい という悲しみ)を原動力にして勢いで送信したくせに、本人の中でいつのまにか正当化されている。
そして送ったはいいがだんだん耐えられなくなる。百花に責任を押し付けようとして見抜かれる。私的な恨みを「傷ついた人のための正義だった」とすり替える。はっきり言って「ダサい」状態です。
もちろん、ニコちゃんの失敗をSNSなどに晒しあげるよりは事務所に報告する方が行為としての正当性がある。ですが、思い知れ!という気持ちがある以上、それは復讐なのです。
しかし私は自分を特別だと思っている自己愛的で高慢で潔癖な少女が大好きなので、その精神性ごと否定する展開には絶対しません。どうぞ安心してこの先の物語へお進みください。
お読みいただきありがとうございました。
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