最初にお伝えしますが、個人の趣味で書いているレポです。
下にスクロールしても「お店のご予約はこちら!」と書いてあったりはしませんのでご安心ください。
「推し香水」、最近よく聞きますよね。
公式グッズとしてキャライメージの香水が出ていたり、推しの解釈を書いて送るとそれを元に作ってくれる素晴らしいサービスも存在しています。
そんな中、好きな子への想いが募りすぎて
自分で作りたい!
究極の存在がほしい!
という欲望が生まれ、それを叶えた記録をここに残しました。どうぞお楽しみください。
できあがったもの。夢のような香り
好きな子のこと
今回の主役は「美少女戦士セーラームーン」シリーズの敵キャラクター
セーラーアルーミナムセイレーンちゃんです。
今年の6月初頭、映画公開に伴うアニメのYoutube公開をきっかけに彼女の魅力に惚れ込み、それから狂おしい日々が始まりました。
昔の作品ですから「新規の供給」が基本的にありません。SSRも新衣装も新曲も新イベも何もありません。
ただ運のいいことに私は作家活動をしていて自分で絵が描けたので、彼女の姿を筆に乗せて幻想を追いかけていました。
自作の幻覚グッズのひとつ
やがてひとり遊びも極まってきたところで「イメージ香水が欲しい! 概念を吸いたい!」と願うようになりました。
けれど、人魚モチーフということで最初に浮かんだANNA SUI ファンタジアマーメイドが、なんだか全然しっくりこない。瓶も人魚で水色で可愛いのに。
他にもいくつか試しましたが、どれもセイレーンちゃんではなかった。当然です。私の幻想は私の中にしか正解がないからです。
そして思い立ちました。
誰かが考えた既存の香りではなくて
自分で唯一のものを作ればいいのでは?
事前準備編
私「推し香水作ることになった!楽しみ!」
友人「それ系、解釈固まってないと難しいよね。
推しカクテル作ったことあるけど、オーダーシート記入が大変だった。
自分の中のイメージが相当しっかりしてて、迷わずその場で書けるくらいじゃないと手が止まる」
私「情報が有益すぎる」
調香体験ができるお店の予約の日まで一週間あったので、すぐに気に入ったノートとペンを買ってきました。
そして解像度を上げるため、
全セリフを書き出しました。
(寒色がセイレーンちゃん、暖色が相方のレッドクロウさんの台詞。二人で話すシーンが圧倒的に多い)
写経をしている気分でした。耳に響く甘やかな声をただ受け取ってペンを動かしていると心が落ち着いてどんどん頭が冴えてくる。
ああ、私のお姫様は字になってもかわいい!
言葉そのものだけでなく話し方の癖や、話し相手で変わる声のトーンの違いもはっきりわかってとても有意義。
次に、イメージを言語化し明確にするためプロフィールを作って埋めました。
私が書いたものを画像で置いておきます。読みたい人だけ拡大してくださいね。
これが埋まれば基本的に大丈夫だと思うので、あなたの推しの何かを作る時の参考になれば幸いです。
キモオタになることを恐れない
なかなかのサブタイトルですが正直これが一番大事なので冒頭に書きました。
調香は「正解のイメージ」を持っている私と「香水の知識」を持っている調香師さんとの共同作業です。恥入って何も伝えられなかったら準備した意味がありません。
羞恥心を捨てるイメトレと話す内容の整理をして当日を迎えました。
私「思い入れのある女性キャラクターのイメージで作りたいんです」
調香師さん「どんなキャラクターですか?」
私「主人公に対して敵役です。一人称は主に『わたくし』で、お嬢さま言葉で話します。モチーフは人魚、イメージカラーは水色です」
一気に全部喋らず、まずは大枠から話し始めました。私にとってはよく知っている子でも相手にとっては初めましてだからです。
共通イメージを持ってもらうことがとても大事なので、キャラクター像が浮かびやすい部分を厳選して最初に出しています。
このとき、調香師さんが全力でメモをとりながら「もっと情報下さい! あなたの持っているイメージを香りに変換するので、情報は多ければ多いほど良いです!」と言ってくださって、とっても話しやすくなりました。
私「外見の印象と実際の言動にギャップがあります。設定画をお見せしてもいいですか?」
調香師さん「お願いします!」
冒頭で書いた通りここで恥じらうことは無意味なので、セリフ書き出し+先ほどのプロフィール全部載せノートを手元に置いて順序立てて全部話しました。
よどみなく言葉が出てきたのはノートのおかげ。本当にしっかり準備してきてよかった!
たくさんお話しして共通イメージができたところで、調香開始です。
至高の存在を求めて
完成した「セイレーンちゃんの香り」レシピ
トップノート…
つけたての香り。香水の第一印象を決める。
ミドルノート…
つけてから30分~1時間くらい続く。コンセプトが明確な香りを使うことが多い。
ベースノート…
最後にゆっくり上がってくる香り。優しく広がる。
調香師さん「では、基礎となるベースノートから作っていきます。ベース用の香りをお持ちしましたので(と言って私の前に瓶をずらりと並べる)、イメージに合うものを選んでください」
これがもう、本当に楽しかったです!!
とにかく種類が多い。
ベース〜トップノートまでそれぞれ、お花から科学的な香りまで色々ありました。
変わったところで「きゅうり」、私は選ばないけれどダンディ系の男性キャラなら素敵かもと感じた「タバコ」、反対に甘くて幼い愛らしさがある「チェリー」など。わくわくする体験でした。
手元の紙に書いては消し、これは違う、ああでもこちらの方が、と彼女のイメージを手探りで追い求める探究者になる。
自分の中の印象と照らし合わせながら、少しずつ形作っていく満足感がありました。
私「『モス』で悩んでます。
静かな森の中に一人で佇んでいるみたいで個人的に好きですが、木の匂いが強くなってしまうと彼女のイメージではありません。
『バイオレット』はもともと好きな香りで、可憐なので入れたいなと思ってます」
調香師さん「今ベースノートの一番に選んでいる『ホワイトアンバー』は石鹸を思い出させる香りで、優雅な印象もあります。
清潔な感じで大人のキャラクターということなので、女性らしい雰囲気にしたいならぴったりです。
これに合わせるなら『モス』より断然『バイオレット』です」
私「ジャスミン2種類ありますがサンバックの方が好きです」
調香師さん「この『ジャスミンサンバック』は単体でいい香りですが他と合わせていくと夜っぽくなります。
あなたの持つ印象に近くなるのは『ジャスミン』の方かなと思うので、試してみましょう」
調香は奥が深く、ただ好きなものを混ぜればよいというわけではない。
「私の持っているセイレーンちゃんの印象」を表現するためにたくさんの知恵を貸していただき、ついに至高の存在のレシピができました。
ここで最後の仕事です!
自分の手で、ビーカーの中に一種類ずつ、選んだ香りを加えていきます。
どれも少しずつスポイトでとって、息を詰めて慎重に……
混ぜ合わせたら、調香師さんが瓶に詰めて渡してくれるので、あらかじめ伝えておいた香水タイトルのラベルを貼って完成!
完成品。PR記事ではないためロゴ等隠しています。
白い紙のムエットに最初のひと吹き、
セイレーンちゃんの香りだ……!!
少し泣きそうになりました。
後述しますが実は一度失敗していて、もしかしたら香りで表現するのは難しいのかも、なんて思っていたんです。
ここで再びレシピを。
つけたてのトップノートはデューベリーとライチの甘みを含んださわやかな香りです。
少し加えたハーブが本当にいい仕事をしていて、遠くに感じる不思議な清涼感が彼女のひんやりとした印象を添えてくれます。
この最初の香りの神秘的な現実味のなさが本当に気に入っています。
ミドルノートのオーキッドの淑やかで透明感のある香りがとても好きです。お花の香りは他にもたくさんありましたが、直感で一番に選びました。
ジャスミンの華やかさ、ブラックベリーの甘酸っぱさと合わさって、清楚で儚くてお嬢さんらしいと感じます。
ベースノートはホワイトアンバーの高い石鹸のような香りをベースに、バイオレットの可憐さ、大人の女性の色気を感じるアンバーを最後に少し足して彼女の外見のイメージを表現しています。
そして、私のこだわりは
・お嬢さん風のミドルノートの中に冷たさをもつアイビー
・見た目の印象中心に構成したベースノートにトンカビーンの蜂蜜のような甘さ
が入っていること。
セイレーンちゃんの持つギャップを感じられます。
全体的にすっきりとした印象でまとめました。強いクセや重さはなく、柔らかくフェミニンで、どこか儚げな香り。
そして最後の残り香が、……今さらどう転んでもキモオタなのでもう言いますが、彼女を宝物みたいに抱きしめたときにふわりと漂う髪の香りといった感じで最高です!!
私自身が直接触れたいという願望はないけれど、印象を閉じ込めたこの一本の香水によって存在感がグッと迫ってきます。
本当に作って良かった。
こんなに多くの原料が入っているのに香り同士が喧嘩せず、まるで物語が流れていくように時間の経過とともに印象を変えて彼女の概念を表現してくれるんですから!
いつでも好きな子の香りが吸える生活、これを幸せと言わずになんと言いましょう。
寝香水にして夢を見たりマーメイドブルー展にそっと付けて行ったりムエットをお渡ししたり全部楽しいです。諦めなくて良かった。
実は、今回レポを書いた調香体験の前に「好きな香りを組み合わせてルームフレグランスを作れる」というショップに足を運びました。
特定を避けるため詳細は書きませんが、私にとって残念ながら納得できる仕上がりになりませんでした。
まず、選べる香りの種類が少なかったからです。
「これがいい!」
ではなく、
「うーん、この中でどれかと言えばこれよりはこっちのほうがイメージに近いな…」
という相対評価で選ぶことになり、結果、組み合わせてもそれなりにしかなりませんでした。
次に、解釈が固まっていなかったです。
ノートを書く前でした。それでも自分の中ではちゃんとしていたつもりでしたが、その場で香りを嗅いで「これだorこれではない」の選別ができませんでした。
なんだかよくわからなくなった結果、よくわからないものが生まれてしまった。
サービスが悪かったのではなく、私に知識がなかったがために自分の理想を叶えられそうなお店を選べなかったんです。
香りという実体のないもので好きな子を表現しようというのだから難しいに決まっています。しかも正解が自分の中にしかない。
世の中に推し概念を作れる系のサービスはたくさんありますが、
私と同じ理想が高くなりがちで至高の存在を求めるタイプの人は、
・とにかく選べる種類が多いお店にする(相対評価になるのを避ける)
・自分の中のキャラ解像度を可能な限り上げる
と正解に近づきやすいと思いました。
書くのが楽しくなる解釈ノートとペンを買いましょう!
推し香水づくりレポは以上です。
一緒に楽しんでいただきありがとうございました!
ご感想等お気軽にお寄せください。とても喜びます。
今回のように二次元の好きな子はもちろん、オリジナルキャラクターの唯一無二の香りを作るものきっと楽しいだろうなと思いました。また訪れるかもしれません。
23.8.21 水野みやこ