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後記 『NICOLA』の連載を終えて

  • 水野みやこ
  • 2021年4月4日
  • 読了時間: 3分

更新日:1月19日



「もっと上手くなってから」


「そんなレベルじゃない」


「まだ準備が整っていない」


という、どこかで聞き覚えのある呪いによって、この物語は胸の奥に生まれてから連載開始まで2年以上かかりました。


『少女の国』『少女の心臓』を描いていた期間が含まれますから、先送りにしつづけていたわけではありませんが、

手記のどこかに書いた「準備期間は2年程度」なんて今考えれば嘘も同然です。実際に描きながら決まっていったことのほうがずっとずっと多い。


この挨拶で格好をつけたかったですが、

実際のわたしは締切ギリギリまで目を血走らせ、毎回のように徹夜し、更新したら死んだように眠り、終わらせても終わらせても次の回の締切がすぐ来て「原稿いやだよ~~~」などと言いながら誰に頼まれたわけでもなく1円も発生しない漫画を描き続けていました。


わたしにはこれが必要だったから。


わたしの中の少女を救うため、同志の"少女"たちを肯定するため、そしてこの血を絶やさないようにするために。




ニコラの誤爆を境に、読み手にかける負荷の大きい回が連続しました。少し上がったと思ったらまた落ちるストレスフルな中盤の展開は、真弓が自分と向き合うのに必要な痛みでした。


特に、


「プロ意識の低さや百花を"殺した"のが許せない!ということにしたい。

けれど本当は、思ったよりも自分が特別な存在じゃないと突きつけられた悲しみが怒りの原因」


という真実が全編通してもっとも残酷だったと感じています。

少女が一番蓋をしたかった「正しくない」欲望や、ずるさを、晒してしまってよいものか悩みました。


けれど5年後の真弓は目を逸らさない。

この欲望すら否定せず抱きしめて生きていく彼女がイメージできたからこそ、あの場面は描かれました。

わたしと真弓を信じて見守って頂き、本当にありがとうございます。




大人になった真弓は、就職を機に実家を離れ、東京に出てきて狭い一人暮らしの部屋で筆をとっています。

一般社員として働きながら、薄給に嘆きつつ、現実と幻想のバランスを大切にして作家活動をしています。

("未来の真弓の部屋 全解説"とでも題してまたどこかで詳細をご紹介しますね)


「お金に余裕のある実家住まいのお嬢さん」ではなくなって初めて、当時の百花の気持ちがわかりました。仲の良い家族は健在ですし、100%わかるとは言えませんが、世間知らずだったあの頃よりは。


彼女は、今の自分が好きです。




この物語は決して「完璧」ではありません。

けれど「最高」です。



プロの作品のようにはいかず、読み手のかたの豊かな想像力にきっとたくさん助けてもらっている。けれど、今現在のわたしに生み出せる最高の状態です。

"理想通りにならない"という恐怖を克服し、最高の物語を世に出せたことを誇りに思います。


真弓を愛してくれてありがとう。

この物語が本として永遠になるまで、

どうぞ引き続き見守っていてください。



2021.4.4 水野みやこ






お読みいただきありがとうございました。

手記の目次はこちら

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