インタビュー没原稿公開&舞台裏へご招待
- 水野みやこ
- 7月26日
- 読了時間: 7分
更新日:7月27日
このたび、『薔薇のつぼみの女王のための歌』を中心としたインタビュー記事が、ダ・ヴィンチWebさんにて公開されました。
私にとって初めての、外部メディアでの紹介記事です。作品のこと、創作のこと、そして大切な少女たちについてたくさんお話ししました。
ご覧くださった方、そしてこの手記に辿り着いてくださった方、本当にありがとうございます。
ここでは、記事に載せきれなかった没原稿と、今回ご依頼をお受けすることにした理由(ちょっとした舞台裏)について綴ります。
個人サイト限定の閉じた内容となりますので、お外には持ち出さずお城の中だけでお楽みくださいね。
没原稿のお披露目
今回、提出したものの、記事に掲載できなかった回答が二つあります。
まずは三番目の質問の、リテイク前の原稿をお見せしますね。
Q.本作で気に入っているシーン、台詞を教えてください。
「絵茉ちゃんの前にいるのはアニメのキャラクターじゃなくて、生きてる人間なんだよ」
第二部・エマ視点より。この台詞は、エマを子供の世界から大人の現実へ突き飛ばした一言でした。
気に入っている場面は他にもたくさんあるのですが、今回はここを挙げます。

高校一年生までのエマは精神的に幼く、他人にも自分と同じように感情があり、好き嫌いや意思があるという、ごく基本的なことを理解しきれていませんでした。
彼女の中では、華やかなドレスを着て先輩と結婚する未来が当然のように決まっていて、先輩をまるで聖女か何かのキャラクターのように理想化し、勝手に盛り上がっていたのです。
けれど現実の他者は、思い通りにはならない。
その衝撃が、彼女の純粋すぎる世界を崩壊させました。
残されたのは、「どうしてもっと早く気づけなかったんだろう」「先輩を好きなのも全部悪いことなんだ」「急いで普通にならなきゃいけない」という、自己否定と強迫観念でした。
記事内では、第一部の咲良視点を中心にご紹介いただきました。
その構成の都合上、第二部から抜粋している上記回答を使うのが難しくなったため没とし、第一部から改めてシーンを選出しました。
どちらの答えも気に入っていますが、第二部まで既読の方の中には、こちらが刺さる方もいらっしゃるかと思ってひっそり置きます。
もう一つの没原稿は、一番目の問いに対して提出したものです。
Q.『薔薇のつぼみの女王のための歌』を創作したきっかけや理由を教えてください。
前作の執筆を終えたあと、まるで自然に花が咲くように、エマと咲良の姿が頭に浮かびました。
きっかけを正確に説明するのは難しいのですが、「どうしても語っておきたい何かがある」と感じたとき、それはたいてい、自分の中で整理のつかない思いや体験と向き合う時期です。
未熟で痛々しいけれど、だからこそ眩しくて愛おしい少女時代。それを極端に理想化するのでも突き放すのでもなく、「そうだったよね」と抱きしめる物語が必要になりました。
自分の過去そのものではありませんが、確かに私の一部を切り分けるような感覚で描いた物語です。
いやー……改めて読むと、なんか良いこと言ってる風で何も言っていない、薄くて無難で逃げている内容ですね!
記事内に書かれている、「愛とか恋って、もっと高尚なものだと思ってた」。
この言葉、そしてここに込められた繊細な感情は、私にとって革命的で、実際に目の前で見届けた、本当に本当に大事にしている少女の魂です。
そうであることを、作品に一度も触れていない人の目に入る可能性がある場所に書くかどうか、迷いました。
そのうえ、これは記事の中で一番上に表示される質問です。現実の話をしたら、そこだけ見て「実体験をただそのまま描いているのか」などと曲解されるかもしれないと思い、怖かったんです。
けれど、私の作品を長く読んでくださっている方にとって、これは本当に読みたい答えと言えるだろうか?
こんなに薔薇の女王の話をたくさんするのは初めてで、楽しんでもらいたいと思って書いているのに、無難でいいのか? そう思いました。
最終的に掲載された回答では、胸に残る一言がこのお話の輪郭を作り、原点となったことを正直に綴っています。
なお、「高尚」を中学生のエマと咲良にとって自然な話し言葉に置き換えた、
"制服を着ていた頃、愛とか恋ってもっと綺麗なものだと思ってた"
は、実際に『薔薇のつぼみの女王のための歌』のキャッチコピーとなっています。
なぜ今回、インタビュー依頼をお受けしたのか
私はこれまで、紹介記事などのご依頼をすべてお断りしてきました。
どこか他人事のような文面が多く、作品そのものを読まずに数字だけを見て、形式的に扱われていると感じることが多かったからです。
けれど今回のご依頼メールには、取り扱いたい作品名がすべて正確に書かれていました。
これを読んでいる皆さんは、そんなの当然だと感じるかもしれませんが、めったにありません。
漫画に関するご依頼は、ほとんど全てが、SNS投稿用の通称(〇〇な話)をそのまま貼り付ける形で届きます。
実際、この連絡とほぼ同時期に受け取ったメールの中で、『NICOLA』が『推しを信仰する少女のお話(第二話・4月編)』と呼ばれていました。第一話ですらなく!
それが今回、『NICOLA』や『薔薇のつぼみの女王のための歌』はもちろん、短編集に収録されておりタイトルに辿り着きにくい『エマージェンシーコール』まで正確に記されていました。
相手が大切にしている作品を借りるのだから、同じように大切に扱おうとする。そのような姿勢を感じたことが、今回お受けして各作品を預ける決め手になりました。
これを読んでいるあなたは忘れないでくださいね。
相手の好きなもの、作ったもの、思い入れのある何かは、たとえ自分にとって強い興味がなくても、その人にとっては大事なんだという感覚を。
この場合は仕事上の信頼ですが、友人同士の関係でも同じです。
無理に一緒に盛り上がろうとしたり、好きになろうとする必要はないと思います。ただ理解を示して丁寧に扱ってもらえるだけで、きっと嬉しくて安心しますから。
私自身は、この感覚が育つのが遅かったので、後悔が残る教室の光景がいくらでも浮かびます。
現実の男性アイドルが好きな子のお喋りを適当に流してしまったけれど、彼女は私と楽しさを共有したくて話してくれたんだから、もう少し真剣に聞いてあげればよかった、とか。
よく知らないキャラクターが表示されたゲーム機を、何も考えず雑に机に放って悲しませてしまったけれど、その子の大好きな人なのだからもっと丁寧に触れるべきだったんだ、とか。
ところで、先日おこなったファンアート交換企画にて、参加者さんから「私の大切な存在を同じように大切に扱ってくださって嬉しかった」という旨のお言葉を頂きました。
それを読んだとき、ずっと引きずっていたこれら過去の失敗が少しだけ赦された気がしました。
今も決して完璧ではありませんが、やっと誰かの大切なものを抱きしめることができる人間になれたのだと思えて、心がほどけるような気持ちでした。
以上です。ここまでお読み頂き本当にありがとうございました。
公開されたインタビューとあわせて、楽しんでいただけましたら幸いです。
手記の目次はこちら
最後に、差し替え前の内容を残しておきます。
♛ お知らせ その①
明日の夜、『薔薇のつぼみの女王のための歌』をめぐるインタビュー記事が公開予定です。
作品のこと、創作のこと、そして大切な少女たちについてお話ししました。
URLは公開後に改めてご案内します。どうぞお楽しみに!

♛ お知らせ その②
インタビュー記事の没原稿を中心に、今回の舞台裏のお話を綴った手記を近日公開予定です。
広く告知はいたしません。こちらは、日頃ボロヴィニアを訪れてくださる方だけに楽しんでいただけたら嬉しいです。
うまくいけばこのページが明日にはそのまま差し替わっている……かもしれませんが、まだ清書し始めたばかりですので、もし間に合わなければのんびりお待ち下さいね。