2021年5月から9月までのツイートより抜粋。
備忘録です。誤字脱字等の修正、一部注釈あり。
21.5.4
(NICOLAの話)
推しの「お見送り」に緊張しながら挑むシーン。
同担の二人は何を話すか事前に仲良く考えていたけれど、このあとはっきり明暗が分かれる。
ニコラは"平等に"という意識はあれど、真弓が傷つかないよう上手く遮って百花に話題を振れるほどの経験値は無い。時間が足りなくなって終了。
「舞台の客出し(見送り)なんて無い方がいい。常連と知らない話で盛りあがる推しの近くで待つ疎外感と、舞台を降りた素の人間を見せられる虚しさ!
結局いつも何だか苦しい、嫌な思いをすると分かってるのに、同担みんなアピールしてく中で推しと交流できるチャンスを捨てて帰れるほど強くない……」
↑アイディア出しのノートより引用。誰と定めていませんが感覚的に真弓。非常に繊細なファン。
たとえば推しに目を逸らされた(と感じた)だけで「手紙かTwitterで変なこと言ったかな、何か迷惑だった?(=嫌われたかも)」と不安でたまらない自意識過剰。
そして向いていないのに、損をしたくない心理で接触をしてまた傷ついてしまう少女。
何名かお気づきの方がいらっしゃいましたが(ありがとうございます!)さっさと帰って見送りを回避するちえりがここにいます。彼女はニコちゃんに求めているものが明確。自分を見てほしくはなく、接触も要らない。
長いお話の最後に。
初期の構想段階ではこのシーンでニコラと話すのは真弓&百花ではなく、真弓&ちえりでした。
「終演後ロビーにニコラが現れる。自分の知らない過去の舞台の話をするニコラとちえりの二人を見て物凄い疎外感。絶対に埋められない差を突きつけられ、猛烈な嫉妬心を抱く」
という場面として存在していました。
21.5.11
真弓、例のシンカンセンスゴイカタイアイスを楽しみに乗車、車内販売が回ってくるのが遅く、小田原あたりから食べ始めて詰む
21.5.11
早朝のバスタ新宿で身支度する少女。スーツケースを引いて新幹線を降り、まっすぐJRに乗り換える娘。劇場近くのカフェに集合し、黙々と手紙を書く女たち。
店内に同じ推し色を纏う人を見つけて、なんとなく緊張が走り、無意識に前髪を直し、自分が出演するわけじゃないのに、開演時間が近づくと落ち着かなくて、仲間の中でも年上のお姉さんが持ってきた差し入れは新宿伊勢丹の立派な紙袋に入っていて財力の違いを感じつつ、みんなでお金を出し合って贈ったスタンド花を確認して四方八方から写真を撮り、
プレゼントの記名用に備えてあるペンのインクはいつもかすれていて、「あ、ちょっとお取引があるから」とロビーに留まる同行者、女子トイレの長蛇の列に時間を心配しつつ並び、やっと席につき、隣同士手を握り合って、永遠にも感じる開演前の五分間の高揚をやり過ごす、そのすべてが彼女たちの世界。
推しと過ごした時間よりも、仲間たちと過ごした時間のほうが遥かに長い。
学校の友人とは少し違う、特殊で貴重であっけなくて刹那的で熱っぽくて愛おしい関係。
離れてやがて思い出すのは、推しが輝いていた最高のワンシーンよりも、なんでもないみたいな顔をして静かに流れていった、あの時あの場所にいたわたしたちの二度と戻れない瞬間のこと。
21.5.12
昨日のファン仲間の話の続き。
どんなに仲が良くてもこの事実(ルリさんの「私たちは同じ男が好きな女の集団」)は変えようがない。
彼女は過去にこれを痛感し、皆そんなもんだよねと割り切って他者に対する期待値が低い大人になった(=楽になった、傷つきにくくなった)
真弓は潔癖な少女で「ファンの好きな気持ちは神聖なものだ」と信じているから男女のあれそれを持ち出されると汚く感じて受け入れられない
だけど、時に推し本人すらお呼びじゃないほどに、目の前の女の子のことを愛おしいと思う。感受性を共有する同志の強い連帯感。彼のことは何もわからないけど、隣に立つこの子の笑顔と涙と今までの人生は知っている。
そういうことってあります、絶対!
21.5.15
引っ越し後やっと音楽設備を復活させ、最初に聴いたアリプロの『閉ざされた画室』で感極まって泣いて、はじめて自分の部屋になったと感じました
静謐で切り離された美しい世界に浸る時間が必要だったみたいです
たくさん好きな曲がある中で『閉ざされた画室』と『今宵、碧い森深く』は幻想的な情景に導かれて語り手の感性の中に入り込んでいく感覚が格別
21.5.15
友人に"永遠の少年"愛好者がいて「少年キャラは成長しないでほしい、どうか少年のまま死んでくれ」と言うんですがその思いが凄く好き
21.6.3
『少女の国』のポップを作りながら、これはこの時にしか描けなかった話だから描いておいてよかったと確信した
特に三話目の、飲み会に放り込まれた性嫌悪少女の話は"絶対にいつか描こう"を形にできたもの。ここに留めたからいつでも帰ることができる
21.6.11
(シャドーハウスの話)
エミリコに「個」でいてほしいと言うケイト様のシーンが大好きで前半の山場だと思っています
人は"同じ"や"共感"で好きになっていくもの。あなたはあなたで、私とは別の存在でいてほしいなんて、なんて深い尊重と愛情だろうと読むたび泣いてしまいます
21.6.15
音楽は記憶装置なので、アルバムを流すとそれを一番聴いていたとき心の柔らかいところに刺さった経験が蘇る。大好きだったキャラクターから、友人と喧嘩して震える指で電話をかけた部屋の情景まで。
21.6.16
少女を"殺す"こと、摘み取られて死んでしまった少女、何もかも諦めて彼女の死体に献花を捧げる少女、全てを憎み燃やし尽くしてしまいたいと慄えて唇を噛む少女……
21.6.16
銀の糸で小指同士を結んだ少女と閉鎖的な世界を作り上げては裏切られ、心臓から血を流してもまた新たな運命に出会い、同じ感情と美しいものを共有して再び鼓動がやまない、真弓の人生は豊かで孤独。結局彼女が一番愛しているのは自分自身の感性だから。それでいいんです。たくさん愛してあげたらいい。
21.6.16
『少女の国』三話目に出てくる性嫌悪の苛烈な少女=『NICOLA』主人公真弓の好きな作家「可奈子さん」です
学校の友人のような直接の交流はないけれど、作品を通して血を受け継いでいる。生身の触れ合いよりも深く。可奈子さんの前にも彼女に魂を分けた誰かがいて、真弓の後にも脈々と続いていく
21.6.20
美人の先輩(憧れのお姉さま)という存在に恵まれ続ける思春期を過ごしたため、その概念に対する信仰心がとても深くなった
21.6.20
ひとりの友人に依存しがちで、自分以外にその子と仲のいい誰かの存在を疎ましく思う湿度の高い少女大好きです
21.6.26
いつかの自分と重ねて胸がふるえ、過去の経験が引き出されて思わず喋り出してしまう物語が好きです
だから生み出した作品が誰かにとって魂が共鳴する存在になったとき、ああ作っていて良かったと感じる
21.7.14
学校で友人とノートに描き合う遊戯に留まらず 初めて外の世界に出した二次創作がハトプリでした
それはただの空想と言ってしまえばそれまでですが 憧憬とたくさんの情熱がとてもとても思い出深い
わたしがモブ女生徒だったら月影ゆり先輩に狂おしいほど憧れて時折泣いてますね
21.7.15
ニコラが何を考えているのか
自分のことを知ってくれていたのか
ちえりちゃんのことをどう思っていたのか
真弓には永遠にわかりません
どんなに本当らしく感じても
解釈と推測でしかないのです
天使とはなんなのか
ニコラの精神性
アンドロギュヌス願望
彼の考える「美しい」……
もしいつかの未来にニコラ編を描くならば、真弓の目を通してではない形で筆に乗せます
21.7.15
「私だけは本当のあなたがわかってる」と本気で思って 夢を見て 信仰して傾倒して相手を神格化してしまう
そんな、現実世界から半ば足が離れた空想的で繊細で危うい少女をとても愛しいと思うから真弓が生まれました
連載中、真弓への共感のメッセージや寄り添う暖かな眼差しを受け取り、少女にはたくさんの同志と味方がいると感じて心強かったです 頂いたお気持ちはずっと宝物です
21.8.5
"美しい"を音楽に乗せて教えてくれたアリプロが柔らかな感性の少年少女だった人の心に今も咲いているのを見て幸せな気持ちになるのでずっと読んでいたい
「大人になりたくない。穢れて鈍感になって、こんなにも愛している物語や音楽に同じ熱量が持てなくなる日が来るのが恐ろしい」と思っていたけれど
かつて自分を救ってくれた美しいものたちは、人生の中で立ち返るときいつも優しい故郷のように迎えてくれる
21.8.7
「海王みちるさんは私の理想の少女」と綴る美しいメッセージを受け取ったことがありまして(二年前 絵のリクエストを募集した際のお話です)それがずっと忘れられません
わたしの中のみちるさんのイメージはミステリアスな大人のお姉さんだったのですが、彼女はまだ16歳の高校一年生なんですよね。
21.8.15
作中で5人(と中盤で+1人)いたニコちゃん推しはあれから1年経って2021年のいま既に野菊さんしか残っていません。そういうものです。けれど新しい人たちが入ってきています。
野菊さんは5年後も推し続けています。ニコちゃんが変化を続け、たとえ"天使"ではなくなったとしても、彼女の中では永遠の"天使"であり、10年後もその先も推し続けています。
21.8.15
真弓は2年生で落とした必修を取り返すために余裕のない半期を過ごし、再び夏休みを迎えました。東京に行き大阪に行った去年を遠い夢のように思い出します。
8月後半にさしかかり、蒸した空気と夜の闇と雨の音が重なるとあの日に引き戻され、少女の心臓は傷が開くように痛むのです。
その痛みを彼女はただ苦しいだけのものとは捉えていません。どんなに痛くてもいいからいっそ生傷のまま塞がらないでほしい。今の真弓という少女にとって、このことを忘れてどうでもよくなって楽になるのは感性の死を意味するからです。
21.8.20
「友達の友達は友達」が光属性なら、闇属性は「友達の友達は敵」
波長の合う大好きな友人に、自分よりもっと仲の良い子や付き合いの長い子の存在がちらついたら一人で苦しくなってしまうのです
21.9.8
サンホラはBaroqueが一番好きです
元より初めて出会ったサンホラがBaroqueでした
夏休みの部活帰り 肌を刺すような日差しと蝉の合唱を浴びて緑の道を抜けた先の友人の家、「冷たい飲み物を出してくる」と言って部屋を離れた彼女を待つわたし、傍らで訥々と流れ語られるバロック……
忘れられない情景です
表現方法の驚きと内容の衝撃で思春期のこころに強い揺さぶりをかけられました 何より自分を暴かれたように感じました
今思えば、彼女はわざと4曲目まで飛ばしたのです。わたしに聴かせたかったから。
21.9.18
白と黒なら黒が好きだったはずなのにだんだんと白の方を好むようになってきたのは、思春期の頃に惹かれた薄暗く救いのない物語よりも幸せな結末を望むようになったのと似ている気がする
15歳くらいのころ変わるのが怖くて泣いていて、その(少女的な)気持ちは周囲の誰にもわかってもらえなかったけれど、ボロヴィニアを訪れてくださる方にはきっと覚えがあるのではないか、と思っています
そうして不変を夢見ているからなのか、特にその頃は超越的で幻想の香りがする人間ではないキャラクターを好きになりがちでした
21.9.20
静かに神聖な心で信仰させてくれる天使の姿は本当や嘘を超えて、少女が大人になっても胸の中に残っています。
真弓の描く作品にニコラから受け取った"美しい"が生き続けているから永遠なんです。
お読みいただきありがとうございました。
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