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ペン画メイキング−完璧主義の少女





お越しいただきありがとうございます。


こちらは手順や画材の紹介だけでなく、

ご依頼作品と向き合うときに何を考えているか文章化したメイキングです。



手順のみをご覧になりたい方は、

次の段落を飛ばして「2.下描き」へお進み下さい。




それでは、サーカスへようこそ!





 




ご紹介するのは、長月たまみさん(@tama3_ooo)よりご依頼いただきました創作キャラクター、ジュリアちゃんのペン画です。



メイキングの作成をご快諾いただき本当にありがとうございます!






1.キャラクターの深掘り〜構図の決定



ジュリアちゃんの物語と、一枚絵を数枚拝見して


・球体関節

・ハーバリウムのような脚


この二つがパッと目に入るようにしたい!

と思いました。



なぜなら、それが「彼女が何者か」「何を大切にしているのか」の部分、言い換えればキャラクターの魂でありオリジナリティの在処だと感じたからです。




こちらは実際の制作前のメモ書きです。


※彼女はコンプレックスがテーマの一つになっているキャラクターです。見る人によってはネガティブに感じるワードが含まれていますが、作者様に頂いたお話を元に整理しています。




また、絵全体に奥行きを持たせて画面を華やかにするため、


前景・中景・後景を描く


ことにしました。



「アラベスク(バレエのポーズ)」というご希望がありましたので、形の決まった紙の中で綺麗に見えるよう位置どりを決めました。





いくつか案を出して、このまま進めたら素敵になりそうな構図が生まれました。下描きしながら解像度を上げていきます。






 



2.下描き




・前景……蝶




オーダーシート記載のモチーフ「蝶」を前景に選びました。


今回のような場合は、下描き段階から一枚にまとめてしまうとバランス調整や描き直しが難しくなります。たとえ最後に重なって隠れるところがあっても別々に描きます。デジタルのレイヤー分けに近い感覚です。






・中景……人物




人が絵を見るとき、最初にお顔に視線が行くと言われています。


そのあと下に流れて、キャラクター性を示す「球体関節」と彼女が愛し執着している「踊るための美しい脚」を見てもらえるといいな、と考えながら大切な脚が切れないギリギリまで大きく配置。


私の個人的なこだわり、というか趣味に近いですが、腰の曲線を美しいと思うのでやや強調しています。バレエのポーズがより優雅に見えますよね。






・後景……サーカス




「サーカスな背景」というご指定を受け、彼女のために幕が開くところを描きました。


ランダム配置の前景と斜め配置の中景に動きがあること、人物を目立たせたいことから、ある程度引き算しています。




なお、下描きが完璧である必要はありません。


主に原画鑑賞用の作品に使用している300g/m2の水彩紙は分厚く、紙目の凹凸もあるため、どんなに下描きを繊細に描いてもトレースできない(下から透かしてもぼんやりとしか写らない)からです。


人物は、可能な限り下描きの良さとバランスを本番の紙に持っていきたいので、はっきりした太めの線でなぞって写しやすくします。

迷い線が多くなってしまったら、手間でもトレース用に同じ絵をもう一枚描きます。



一枚ずつ重ね、細いシャープペンで水彩紙に丁寧にトレースし、細部の描き込みを入れたらペンに持ち替えます。






 





3.ペン入れ〜仕上げ



先にペンの紹介をします。



・つけペン

 →タチカワ No.77 ソフト丸ペン


『NICOLA』の現実ではないシーン(LINEでやりとりしている場面、真弓の心の中など)を描いているのと同じペンです。






・ミリペン

 →サクラクレパス ピグマ


定番のコピックマルチライナーや話題になったマービーなどいろいろ試してこれに落ち着きました。消しゴムに比較的強いです。


この2種類を線によって使い分けます。





ペン入れ後の姿がこちら。




実は 最初からメイキングを作るつもりで描いていたわけではありません。たまたま「この段階でもすごく好きだな」と思って写真を残していました。



それぞれのパーツの輪郭線を太めに、


服のしわの線や透ける薄い布、髪の毛は細く。


手前に来るものの線を太く、奥を細く。





ここに濃淡をつけ、

最後に全体を見てバランスを調整したら完成です。




オーダーページ内で「クラシカル影」と呼んでいる、この独特の質感は長らく探してたどり着いたものです。今は内緒の画材としておきますね。





 




ここからはお喋りです。



ご依頼作品の制作で意識していること

なのですが……



正解(完全な解釈一致、イメージの一致)だけを探したり いただいた参考画像をそのままなぞるように描いたりはしません。私にオーダーしてくださる方は、決してそれを求めてはいないからです。



あなたがボロヴィニアのアトリエを訪れたのは、この少女の国に存在している作品のどれかが好きで、それを生み出す感性を信頼してくださっているからですよね。そうでなければ、大切なものを預けたいとは思わないでしょう。


じっくり向き合って私の表現で筆に乗せることで、その信頼に応えたいと考えながら描いています。






以上です。ここまでお楽しみいただきありがとうございました🦋



今後、個人サイトの更新を予定しています。原稿期間が続き、しばらくの間なかなかお手入れができなかったので今から楽しみです。







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